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ナイチンゲールの沈黙

というわけで今日はこちらのインプレを一つ。

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えーと、このミス大賞を受賞された海堂 尊さんの2作目、「ナイチンゲールの沈黙」。処女作「チーム・バチスタの栄光」が素晴らしい出来で、そのあとヒット作を連発している、ということは知っていたのですが、2作目以降は文庫本化されていない=とても持ち歩いて読めない、ということもあってしばらく待ってたところ、先日本屋で平積みされているのを発見して購入。でもって実際に読んでみたのですが、

いやこれは処女作に負けず劣らず素晴らしい一冊。
なるほどこれは確かに話題になるのも納得できる、という感じの作品で、前作に引き続いて2日間ほどで上下巻を一気読み。

前回は死亡時画像病理診断(Ai)という技術を鍵としながら、心臓手術チームに起こった謎の連続術中死の原因を明らかにしていくという作品でしたが、本作の舞台は小児科。眼球に発生する癌である網膜芽腫(レティノブラストーマ)の子供たちを、前作の主人公である田口がメンタルサポートするという筋書きなのですが、舞台としている小児科の人間模様がとにかく面白い。公私を分けるという建前を掲げて自分への甘えを優先させる小児科医の内山聖美、一方で患児への面倒見もよく、職責範囲を超えるほどの情熱にあふれる看護師 浜田小夜、見事な立ち回りと肝どころの押さえ方で仕事をこなしていく看護師長 猫田麻理といった多彩な取り合わせ。一方で子供たちの配置も実に見事で、網膜芽腫の2人に加えて白血病患者の美少女 杉山由紀を配して、成熟した心を持った少女と、淡い恋心を抱く少年の様を描き出す。

そしてそのストーリーを導くのが、この病院の特別室に入院することになった有名歌手の水落冴子。本作はドキュメンタリー風味でありながらもちょっとしたファンタジー要素も取り入れている。それがこの歌手の持つ「歌を通して人の感情を喚起する」能力。もちろんそれ自体では事件を立証することにはならないのですが、それを手がかりにしながら問題の本質に近寄っていく、という筋書き。

前作もそうでしたが、本作のすごいところはなんといっても、医療現場の問題を適度に普遍化しながらも、優れたエンターテイメント性を持つミステリー作品に仕上げられている、という点。様々な登場人物(総勢 20 人以上)たちがそれぞれのロジックで行動しながらも、いつの間にか紐が解けていくかのように問題解決に向かっていくあたりはとにかく見事で、ストーリー展開にめちゃめちゃ吸引力があるんですよね。しかも単にエンターテイメント性を追及するだけではなくて、ちゃんとそれが社会、あるいは医療現場への提言を含んでいるところが実に素晴らしい。例えばベテラン教授が新米医師に放った以下のセリフなどはとにかく秀逸。

「君は周囲の人間の意見に耳を傾けなさすぎる。
スタッフの声に耳を傾け総合的に判断できる、という資質こそ、医師を医師たらしめている黄金律だ。
医師だって人間だ。決して万能ではない。
だからこそ看護師やその他、多種多様な関係者の手を借りなければ医療はできない。」

なんつーか、取り扱ってる題材だけ見てもいろんな知人にお勧めできそうな一作なのですが^^、まあなにより普通に面白い。小児科の児童ケアの話は素人が首を突っ込める話じゃないので内容についてのコメントは差し控えますが、医療現場で発生する様々な問題や事象の一端を垣間見られるというだけでも非常に興味深い一作なのではないかと思ったり。シリーズものなので、読むのであればまずはチーム・バチスタから、という話になるとは思いますが、どちらもなかなか面白いので興味をそそられた方はぜひ読んでみてください。


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コメント(1)

私は単行本で、この次もその次も読みました。最新刊はちょっと重い感じもあったけど、ぜひお試しください。

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