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詩羽のいる街

さてさて、今日のインプレはこちら~。

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えと、「詩羽(しいは)のいる街」。実は結構昔に Web 拍手でおすすめいただいていた作品。ハードカバーでちょっと厚い(しかも字も細かい)ので敬遠していたのですが、いざ読み始めてみると、あれよあれよという間に一気に読破してしまったり。いやはやびっくりするほど素晴らしい作品じゃないですか。本の帯についてる推薦文もまったく意味不明な感があるのですが、いやはやまさかこんな作品とは、とびっくりしてしまったり。

「すべての人間の共通の目的は、幸福に生きることです。
何が幸福かは人によって違いますけどね。
でも、少なくとも不幸になることを望む人はいないはずです。
ところが、いつの間にか、『今まで通りの生き方を続けること』が
人生の目的になってしまっている人がいるんです。
ほんのちょっと生き方を変えるだけで今より幸せになれるのに、
それに気がついていない。」

賀来野市を舞台に展開される 4 つのミニストーリーから構成される物語で、その共通のヒロインがこの作品の主人公、詩羽(しいは)。詩羽はお金も持たず、住む場所もないというのに、他人同士を次々と結びつけ、幸せをもたらしていく、という不思議なストーリー。

お金を持たず、他人同士をうまく媒介することでみんなを幸せにしていく、という物語といえば、魔女の宅急便のキキ(原作の方ですが)を思い出しますが、ああいう系統の物語とはかなり違う。この物語は、どちらかというと他人の手助けをすることで、相手を幸せにするとともに自分も幸せになっていくという、そういう不思議なお話になってるんですよね。

しかもびっくりするのが、それを圧倒的な論理性を以て描いていく、という点。幸せに生きよう、幸せになろうと思ったら、そうするのが「論理的に考えて」ベストな選択でしょ? というところに深く切り込んでいくのですね。もちろん、ストーリー上、多少無理をしている非現実的な展開もあるのですが、大きな枠で言えば論理性が見事に勝っていて、説得力もあるのですね。しかも感情にも訴えかけてくるものがあるので、この本を読み終えると、詩羽のような「触媒的な生き方」がかけがえなく思えてくる。

そして素晴らしかったのが、どうしようもない純粋な憎悪と狂気を、劇中劇としての「戦場の魔法少女」と対比させながらうまく描いていった点。特にせんまほのラストは実に見事で、詩羽の存在とは対極的な世界観から「争いのない幸せな世界」を描き、その気持ち悪さを描出している。(これは DEATH NOTE のラストにも似ていて、要するに力では幸せな世界は構築できなくて、小さな善意をどれだけたくさん引き出せるかで世界が幸せになるかどうかが決まってくる、という、ものすごく分かりやすいテーマになってるんですよね。)

この本で提示されているテーマは、端的に言えば「幸せの作り方」。他人を幸せにすることで自分も幸せに、そしてみんな幸せになっていくという物語を、現実世界(まあ完全にリアルとは言いませんが)になるべく即した形で論理的に構築していっている。いや確かにこれは稀有な物語だなぁと思ってしまったり。

ちなみにネタ的にはアニメやラノベ系のネタが満載なので、アニオタ的な方でもすらすら読めます、というよりもそういう人たちの方が楽しめるのではないかと思ったり^^。あまり類を見ないタイプの作品であるのは確かなので、ぜひ興味がある方は読んでみてください。


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コメント(2)

ホイホ(ry

どもです。
この作品は個人的には2008ラノベのベストでしたので、気に入っていただけたようで幸いです。エントリでも述べられていたように、「純粋な悪意」の存在を描いているのがポイントでした。かなりのお気に入りなのですが、

 「売れる要素がない」

ことだけが残念で仕方ない作品ですw
ヒロインは年増(笑)、舞台は現代、青春劇でもない。正直どうおすすめするのか迷う作品ではありますw
個人的に魂の一作入りした作品。読んでいただきどもでした。
ではでは。

読み終えましたぁー。文庫にして価格もお手頃にして、もっと若い人達が読めれば面白いんじゃないかなぁという気がしました。(生き方とか?)作者の人が懐かしいですねぇ。

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