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最後のパレード - ディズニーランドで本当にあった心温まる話

というわけで今日はこちらの書評をひとつ~。

20090423

えと、最後のパレード。ディズニーランドの開業に携わり、パークのスーパーバイザーを 15 年間つとめた著者がキャストに語り伝えていた 33 個のエピソードをまとめたという本。1 つのエピソードは数ページ程度の短編になっており、サクサク読める割には感動的なエピソードが多いというなかなか興味深い一冊。全体的に、障害者や亡くなった家族などの話に傾倒している面はあるのですが、そうしたエピソードの方が琴線に触れやすいのは確かなので、それはまあ仕方ないことなのかもしれません。

ま、それはともかく、この本を手に取ったのは、たまたまベストセラーのコーナーに並んでいたから……なのですが、実はなにげにこの本に関して盗作疑惑が持ちあがっているのだとか;。すでにまとめサイトもあるので細かいことをあれこれ書くつもりはないのですが、あ゛ー、やっちゃったよ、状態(苦笑)。読んでいて、これは誰が書いたエピソードなのかと疑問に思う場所もいろいろとあったのですが(お客様からの手紙がそのまま掲載されているものもある半面、一人称をかたって誰かが書いたような感じのする文章もある)、2ch で語り継がれているエピソードを脚色してとりまとめたようなものもあって、ありゃー、という感じに;。

これらのエピソードが盗作だったのかどうか? という点に関しては、実際に盗作だったのであれば、スタッフ(キャスト)の士気は一気に崩れるだろうし、さすがに褒められたものではない。ただ、そうした議論を横に置いておいて私がこの一冊を読んでいて思ったのは、何のために仕事をするのか、そしてそのためには何が必要なのか、ということ、だったのですよね。

例えばこの本の中に出てくるエピソードのひとつに、こんなものがありました。指輪を板と板のすきまに落としてしまい、取り出せなくなっていたときのこと。キャストの方が、大切にしていた指輪なので必ず取りだすと約束し、後日、その床を壊して指輪を取り出したという話。あるいはジャングルクルーズで落としてしまった指輪を、ダイバーの人たちが捜索して見つけたという話。

これが実話なのかどうかは私にはわかりませんが(でも TDR だと普通に実話なんじゃないかという気がしますが;)、ただ、こうした数々のエピソードを読んでいると、キャストの人たちが何を大切にして仕事をしているのか、というのが伝わってくるのですよね。それは、お客様の気持ちを大切にしている、ということ。お客様の気持ちを汲み取って、素敵な思い出作りのお手伝いをする、というホスピタリティの精神に満ち溢れている。

けれども、それを実現する上で重要なポイントになっているのが、度外視といっていいほどコストをかけていることがある、という点。上のエピソードなどがわかりやすいのですが、これらはどう考えてもコストがとてつもなくかかっているはず。けれども重要なのは、実際にそのコストをかけられる、という点だと思うのですよね。

ビジネス的な観点から見た場合、上のエピソードではぶっちゃけそこまでする必要性は皆無、でしょう。けれどもそこに仁義はない。なぜ TDR のような場所で上記のようなエピソードが成立しうるのかというと、

  • キャストのみんなが一つの方向を向いている。(=その目標や志のために残業や厄介な仕事などが発生してもそれを積極的に進んで快く受け入れる素地がある)
  • 仮にそのために追加のコストが発生したとしても、それを吸収できる経済的余裕がある

の 2 つがあるから。そしてこの 2 つが揃っているからこそ、TDR は入園料を下げなくてもちゃんとお客さんが集まるし、仕事としても良循環のサイクルがまわっているのだと思うのですよね。

結局のところ、ポリシーや志のない仕事のやり方は、短期的には成功しても、長期的には成功しない。コストとサービスはバランスが取れていることが重要。そんな当たり前のことを実践することが、多くのビジネスに共通する基本的なキーポイントなんじゃないかなぁ、という気がします。

盗作疑惑でケチがついてしまったのは残念なところですが、自分にとって仕事をするということがどういうことなのか、ということを考えさせてくれる良著。ちょろっと読み流せる本なので、手にとってみてもよいんじゃないかと思います。……いやまあ、盗作自体はダメすぎですけど><。


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コメント(4)

盗作本を無責任に良著と薦めるのは志が低いとしか思えません。
盗作された人の気持ちを考えたことがありますか?

被害者へのサービス心は無いのですか?


結局この本、先日、自主回収されたみたいなので、結果的には黒、でしたね;。

私はこの本に関しては、盗作の是非の話と、エピソードの価値の話とは、分けて
考える必要があると思っています。仮に盗作であったとしても、(創作でなければ)
「誰かが誰かを助けた」という事実はちゃんとそこにあって、そこには人と人との
思いやりがあったわけで。盗作だったとしても、オリジナルエピソードにあった
価値まで損なわれてしまうわけではない、と思います。

私がエントリを書いたのは、盗作本疑惑が報じられた直後でグレーゾーンでした。
このためエピソードの価値に偏らせてエントリを書きましたが、前者についても
きちんと書くべきだったかもしれませんね。(ただ、グレーな状態で盗作を糾弾
することはリスクもあるので、その辺はちょっと差し引いていただけると助かる
ところなのですが。)

しかし著者はあれこれ理由くっつけて突っ張っているようですが;、話はそう
簡単には終わらなさそうな気配ですね。出版社が自主回収を決めたといっても、
実効性はほとんどないに等しいので(実売で 40 万部を売り上げているため)、
どう落ち着くのかはちょっと気になるところです。

>「誰かが誰かを助けた」という事実はちゃんとそこにあって

既にまとめサイトで検証が行われているのに
調べもせずにいい加減なことを書いてますね。

盗用されたネット掲示板に書かれたエピソードが
実話か?創作か?
どうやって判断されるのでしょうか。
とても不可能と思いますが。


>盗作だったとしても、オリジナルエピソードにあった
>価値まで損なわれてしまうわけではない、と思います。

読者がそう言ってしまうことで
これから盗作本を出版しやすくなるという
ことを考えないのでしょうか。
無責任です。

やっぱりこの話、揉めますね;。怒人さんがおっしゃりたいことも心情的には
わかりますし、その後の著者の反応にも呆れるものがあります。(子供がウソに
ウソを塗り固めようと頑張っているようなものですからね。)

> 読者がそう言ってしまうことでこれから盗作本を出版しやすくなるという
> ことを考えないのでしょうか。

いや、そんなことはないでしょう。私が書くまでも言うまでもなく、盗作に
関する社会的ペナルティは出版社などに対して下されているからです。
私のコメントは、出版社や著者への行き過ぎた非難が、エピソードそのものの
価値にまで及んでいるように思えることへの牽制球です。

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