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Vision, Mission, Strategy

最近はアニメやゲームネタばっかりだったので、たまには真面目なエントリをひとつ。

先日、会社の合宿があったのですが、その合宿のネタは、組織で新しく作られたビジョンとミッションについてみんなでディスカッションしよう、というもの。実はこのビジョンとミッションは、先月、私が入院している最中に、組織のトップから直接私のところにメールが来て、事前に「どう思う?」と質問されていたネタだったのですが;、なまじ中身を知っているだけに、自分はいったいどうディスカッションに参加すればいいのかと微妙に悩むワナ。orz まあ結局は、フラットな気持ちで臨むことにした(というより一カ月も前の話なので自分が考えたことを忘れられるw)のですが、議論の中で結構困ってしまったのは、そもそもビジョンやミッションがどのようなものであるべきか、ということに関して知らない人が多い、ということ。

「組織にはビジョンが必要である」といったことが言われ始めたのは、今からだいたい 10 年ぐらい前のこと。元をたどれば、1994 年にスタンフォード大学の教授が著した経営書である「ビジョナリーカンパニー」という本で提唱された概念。そのキーポイントは、長期的に成長を続けることのできる会社には、ビジョンとでも呼ぶべき基本理念がある、というもの。そのビジョンは社員たちにとって進むべき羅針盤とでもなる未来像を示しており、経営戦略が変わっても、基本理念は永続的に変わっていない、ということを示したのですよね。

がしかし、問題なのはこの後。2000 年に入ってから、日本でもこの「ビジョン」の重要性が謳われるようになり、ビジョンに関する研修なども多数出てきたのですが、原著を知らない人が「ビジョン」という言葉だけを使うようになると、イメージ先行でビジョンというものが語られるようになってくる。ビジョンとは「未来像」であり、「未来のなりたい自分の姿」だ、といった、字面だけの解釈が中心となってしまう。その結果、ビジョンの中に「3年後の売上を、現在の2倍にする」なんていう、ビジョンとは全くいえないようなものがビジョンステートメントとして定義される、というトンデモな状況になってしまったのですよね;。原著を読むとすぐにわかるのですが、このような売り上げ目標などは「ミッション」(=達成すべき経営目標)であって、基本理念となるようなものではない。基本理念は、言ってみれば従業員たちの心を束ねる信念であるべきもので、数年経ったらころころかわるようなものであってはならない(少なくとも数十年に渡って変化しないようなもの)のですよね。

わかりやすくまとめると、

  • ビジョン(基本理念、信念)
    その企業に勤める従業員たちの、「心を束ねる」ような信念となるステートメント。それが理想であることを疑う余地なく共感でき、かつ、それが自分たちのレゾンデートル(存在理由)であると信じることができるようなものである必要がある。経営環境や世界情勢などが変化したとしても、数十年に渡って変わることのないものでなければならない。このため、「夢物語」的な側面もある。逆に、このビジョンの中には「具体的な方策」(メソドロジ)は通常含まれない。
    例 : 「優秀な人材を育て、世界一となる人材を輩出し続けることで、世の中をより幸せにする。」
  • ミッション(達成すべき経営目標)
    前述のビジョンを元に、自分たちが何をなすべきか、どんなことを達成すべきかを、具体的な目標として定義する。このため、このミッションの中には具体的な数値などが含まれることもあり、また数年ごとに見直されることもある。ただし、ビジョンとの整合性が極めて重要で、「人々を幸せにする」などとキレイゴトを言いつつ、「数年後に売り上げを 3 倍にする」といった利己的な経営目標を立てると、従業員の心を束ねることはできない。
    例 : 「毎年、優秀な講師を少なくとも5人ずつ採用し、東大模試のトップ1割に5人の生徒を食いこませる。」
  • ストラテジ(具体的な戦略)
    前述のミッションを、どのような方法で実現していくのかという戦略や方策を定義する。このストラテジは極力具体的なものであるべきで、かつ、実現可能なものでなければならない。
    例 : 「優秀な講師の抱え込みのために、毎年、年初の入学生に対して積極的なリクルーティングを行う。それと同時に、口コミで講師から優秀な講師を探してもらい、実際に優秀だった場合には一時金を与える。また、模試のトップに食い込むためには母数を増やすことが望ましく、そのために毎年生徒数を50人ずつ増やす。」

といった感じ。ちなみにこのミッションは、つどつど見直されることが望ましく、例えばこの目標が達成された場合には、ターゲットを京大や医学部などに広げてもよい。けれどもこの場合であっても、ビジョン自体は永続的に変わることがない。このビジョンとミッションとストラテジの一貫性・整合性が、とても大切なのですよね。

この辺のことは、ビジョナリーカンパニーという経営書の名著を読んでちょっと考えれば分かることなのですが、意外にこの手のビジネス書は読まれていない、という印象。経営者であれば当然ですが、そうでない普通のビジネスマンであっても、こうしたビジネス書はいろんなヒントや気づきを与えてくれるので、興味がある方は読んでみてもいいんじゃないかなー、と思う次第。……いやまあ、単に私がこの手のことをぐだぐだ考えるのが好きだから、というのもあるんですけどねぇ;;。


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