というわけで今日はこちらの書評を一つ。
「死ぬときに後悔すること25」。正式タイトルは、「1000人の死を見届けた終末期医療の専門家が書いた、死ぬときに後悔すること25」。たまたま本屋で平積みになっていたものをタイトルに惹かれて購入してみたのですが、いやはやこれは本当に素晴らしい本じゃないか、と感心してしまったり。
著者の方は、終末期医療、より具体的には主に末期がんの患者さんの心身の苦痛を取り除く、緩和ケアという仕事をしているお医者さん。まだ33歳という若い方なのですが、約1000人近くの患者さんたちを看取ってきた著者いわく、「身体的な苦痛は取り除けても、その人の心の苦痛を取り除くことはなかなか難しい」。見届けてきた患者さんたちのほとんどは、大なり小なり何らかの「遣り残したこと」を抱えており、それゆえ何らかの後悔をしているのですが、しかしその後悔の度合いや大小にはかなりの違いがあり、そして何百も症例が集まると、意外に似たような後悔が多い、ということに気付いてきたのだとか。ならば、終末期に皆が必ず後悔することを前もって紹介し、元気なうちにやっておいてもらえば、やり残した後悔は大きく減らせるのではないか、ということでこの本を執筆した、とのこと。
……とまあここまでは「ふーん」という感じなのですが、実際に読んでみると、これが実に耳が痛い話ばかり、なのですね。
- 健康を大切にしなかったこと
- たばこを止めなかったこと
- 生前の意思を示さなかったこと
- 治療の意味を見失ってしまったこと
- 自分のやりたいことをやらなかったこと
- 夢をかなえられなかったこと
- 悪事に手を染めたこと
- 感情に振り回された一生を過ごしたこと
- 他人に優しくできなかったこと
- 自分が一番と信じて疑わなかったこと
- 遺産をどうするかを決めなかったこと
- 自分の葬儀を考えなかったこと
- 故郷に帰らなかったこと
- 美味しいものを食べておかなかったこと
- 仕事ばかりで趣味に時間を割かなかったこと
- 行きたい場所に旅行しなかったこと
- 会いたい人に会っておかなかったこと
- 記憶に残る恋愛をしなかったこと
- 結婚をしなかったこと
- 子供を育てなかったこと
- 子供を結婚させなかったこと
- 自分の生きた証を残さなかったこと
- 生と死の問題を乗り越えられなかったこと
- 神仏の教えを知らなかったこと
- 愛する人に「ありがとう」と伝えなかったこと
字面だけ読むと誤解しそうな項目もあるので、細かいところは原著をぜひ手にとって読んでみていただきたいのですが、少なからず「あいたたた;」と思う項目がある。さすがに実感を持って感じることのできない項目もあるのですが(遺産の話とか子供を結婚させなかった話とか)、とはいえ多くの項目が「これを死ぬ間際に後悔したら本当に辛いだろうな」と思えるものばかり、なのですよね。
いろいろと印象的なエピソードが多かったのですが、やはり改めてその大切さを感じたのが #25 『愛する人に「ありがとう」と伝えなかったこと』。他者への感謝の心を持つことは何よりも大切なことだと思いますが、「ありがとう」という言葉で紡がれる世界はとても幸せな世界だろう、と思わずにはいられなかったり。そうした幸せな世界を紡ぐためには、他者に感謝し、他者からの感謝の気持ちに感謝で応えるという、インフレスパイラルな関係を築いていくことがなにより大切なのだろう、と改めて思います。
自分の心を保つために、人を蔑むような人が少なくない今の時代において、そういう関係を築き合える人というのは本当に少ないものだと思いますが、そういう貴重な友人や知人、親友などは本当に大切にしていきたいものですね。
なにはともあれ、さすがに多数の症例から出てきたエピソードの数々だけに、一読の価値はある本だと思います。著者の若さゆえにまとめきれていないと感じられる点もあるかもしれませんが、ぜひ一度、お手にとってみてください。
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