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書評:アップル、グーグル、マイクロソフト クラウド、携帯端末戦争のゆくえ

今日はこちらの書評をひとつ~。

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ええっと、「アップル、グーグル、マイクロソフト クラウド、携帯端末戦争のゆくえ」。先月に発売された新書のようですが、内容としては、クラウドコンピューティングの世界において覇権を競っている 3 つの企業、アップル、グーグル、マイクロソフトの 3 社について、そのアプローチの違い、市場で何が起こっているのか、そして日本企業がどのような立ち位置にあるのかを、極めて平易に解説している一冊……なのですが、いやはやこれが恐ろしく良く書けている、というか実に見事な一冊じゃないですか。

グーグルとマイクロソフトのアプローチの違い(グーグルはクラウドから、マイクロソフトはオンプレミスから)はよく言われることなのですが、この本の面白いところは、その 2 社に加えてアップルをクラウドプレイヤーに含めている一方で、amazon を外しているという点。通常、amazon はクラウドプレイヤーの主要な一角として語られるのが普通ですが、amazon はハードウェアレンタル(IaaS)に注力しており、プラットフォームビジネス領域(PaaS)には弱い、というのですね。むしろ PaaS 領域としては実はアップルが非常に存在感が強く、特にクラウドプレイヤーの中で課金インフラを持っているところが極めて大きなポイントである、という主張については非常に納得のいくところ。

そしてさらに面白いのは、各プレイヤーのコアロジックを明確にしている、という点。例えば、グーグルは、情報の流れを掌握することに主眼を置いているのであって、クラウド化そのものにこだわっているわけではないという点、またアップルはクラウドで覇権を握ることを狙っているわけではないという点。こうした点を明確にしながら、さらに日本企業がなぜクラウドビジネスで出遅れているのか、今後も明るい見通しがないのか、という点について、感覚的ながらも非常に腑に落ちる理由をいくつも提示しているのですね。モノ作り、ハードウェア偏重の日本の文化は、既存のルールセットの中では芸術的なまでに完成度が高いけれども、ルールブレイカーが横行するクラウドビジネスの世界では通用しない、という筆者の論調には、強い説得力があります。

いやはや、私もこの辺は本業ということもあってひととおりのことは分かっていたつもりでしたが、モヤモヤしていた部分も含めて、こうも見事にスパッと分かりやすく整理・結論づけられているとぐぅの音も出ない、という印象。IT に明るくない人にもわかりやすい平易な言葉で書かれている見事な一冊なので、興味のある方はぜひ読んでみてください。いやはや、なかなか面白かったです。


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コメント(1)

早速買って読みました。
この作者凄いですね。今までピンとこなかった部分がきれいに説明されています。しかも恐ろしく平易な文章。
章立ても見事な構成で、ほんの1時間強でクラウドの要所が分かる良書ですね。この作者頭いいですね。

従来からWindowsに決済機構をという話はあり、Microsoftはそれを避けてきたという事情はありますが、
Googleもそれを持っていないという意味は同じで、そこにAppleの意味があるというのは納得です。
ここではあまり言及されていませんが、Amazonのビジネスそのものに関する保守性も理解できるような気がしました。
Appleと似たようなことを別方向からするのかもしれませんね。

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