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葬式は、要らない

さてさて、いろいろ blog ネタはあるのだけれども書くのが追いついていない今日この頃;。ううっ、仕事が忙しいんだよー、と思いつつも、今日はこちらのインプレをひとつ~。

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「葬式は、要らない」……ってこれはまた挑戦的なタイトルだなぁと思うのですが^^、宗教学者である島田氏が執筆した一冊。中身を読んでみると、どちらかというとこれは葬式自体を否定する本ではなくて、戒名や檀家制度の在り方を考え直すことにより、形式的に行われている葬式というものの在り方を問う本、ですね。敢えて言えば、「葬式業者が行う高額で形式的な葬式は、要らない」というのが正式なタイトルになるかな、という感じ。

ベストセラーの新書棚に置かれていて、その挑戦的なタイトルについ興味を惹かれて購入してみたのですが、いやはや読んでいてこれは気恥ずかしく感じることばかり;。実は戒名のシステムがどういうものなのかよく理解していなかったのですが、なるほどそういう仕組みだったのですね。自分の整理のためにざっとまとめると、こんな感じ。

  • 戒名とは、本来は、仏教で仏門に入り、戒律を守るしるしとして与えられる名前。日本では、死後の勲章としての性格を帯びた使われ方をしているが、これは本来の仏教にはない使われ方であり、日本ローカルなものである。(死後に浄土で出家して最終的に仏になる、という浄土思想は日本固有で作られたもの。)
  • 戒名にはランクがある。字数が多いほど高いランク、また院殿号の付いた戒名は特にランクが高い。日本では、こうしたランクの高い戒名を授かるために高額の戒名料を支払うケースがあるが、これは日本の都市部特有のもの。
  • 本来、ランクの高い戒名を預かるためには、檀家システムの中で高いポジションに就いている必要がある(ひいては寺院の維持のために手厚い支援をし続けていく必要があった)が、そもそもこうした檀家システムは都市部では機能していない。このため、戒名料として高額なお布施を取る仕組みが出来上がった。

葬式に関しては、日本は他国に比べて特に相場が高く、平均 231 万円。その中でもかなりのウェイトを占めるのが戒名料なのですが、著者である島田氏はこの点に疑問を投げかけています。端的にいえば、そもそも僧侶から戒名を授かるというのは適切なのか? というのですね。その理由として挙げているのは以下のようなポイント。

  • 戒名は、仏門に入り、戒律を守るしるしとして与えられるものだが、日本の僧侶の多くは妻帯しており、そもそも戒律を守っていない。
  • 死後勲章としての戒名は、日本独自の仕組みであり、明確な名付けルールが存在するわけではない。このため、仏教界の中でも僧侶向けの「戒名付け方マニュアル」が刊行されていたり、戒名をつけるためのパソコンソフトもあったりする。(← 調べてみたら Web サイトとかもありました;。)
  • 檀家になっている寺がある場合には、その寺の経済を支えるために、戒名料を支払い、戒名をそこから授かる義務がある。しかし、寺請制度がなくなった今日において、檀家関係にないその場限りの僧侶から戒名を授けてもらう必要はない。戒名が死後勲章としての意味を持つことを鑑みれば、そもそも故人のことを良く知らない僧侶から、その場限りの関係で戒名を授かること自体に疑問がある。
  • どの寺とも檀家関係を結んでいないにもかかわらず、どうしてもランクの高い戒名が欲しいのであれば、本人が生前につけておくなり、遺族が死後に考えてつければよい。本人や遺族がつけた戒名でも、遺骨を一般の霊園に葬るのなら問題は生じない。自分の戒名を自分でつけたり、他人の戒名をつけている事例は実は結構ある。(例:森鴎外は母親の戒名や友人の戒名をつけたりしている) 戒名が死後勲章の性格を持ち、故人が送った生涯や業績、性格を集約するものであるのなら、本人をよく知る人がつけた方が理にかなっている。

ちょwww、と思わずにはいられませんでしたが、なるほどよくよく読むと、確かに理には適っている。なにより、本人のことを良く知らなければ適切な戒名はつけられないはずだ、というのはまさにその通り。さらにこの本には、戒名を作るときの基本的なルールを簡単に説明しているのですが、なるほどそういうルールで戒名が作られるのか、と納得してしまったりしました。

この本では、葬式というものの意味・意義を改めて問い直し、形式ばった葬式ではなく、真に故人や親族を思う葬式をすべきであり、お金をかければよい葬式ができるわけではない、ということを語っているのですが、確かにそれはその通りだなぁと思ってしまったり。特に戒名にまつわる一連の話を読んでいて、母方の祖父がお坊さんから授かった戒名が非常に良いものだったということを改めて理解したのですが、いい戒名を授かるためにはお坊さんとの適切なコミュニケーションが絶対必須なんだろうなぁと思ってしまったり。どんなコミュニケーションをしたのかは今度実家に行ったときにでも聞いてみよう……^^。

こういう話は一度でよいのでこうしたまとまった本を読まないとなかなか理解しにくいものですね;。非常に勉強になった一冊でした。


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