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ほうかごのロケッティア

というわけで今日はこちらのインプレをひとつ~。

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ええっと、ガガガ文庫から一冊、ほうかごのロケッティア。Web 拍手コメントで推薦してくださった方がいて、さくっと購入して読んでみたのですが、なるほどこれはなかなか素敵な読後感の一冊、じゃないですか^^。

舞台となるイトカ島、それは問題児ばかりが集められた流刑島のような場所。オタクでいじめられっ子だった過去を持つ主人公褐葉貴人は、クラスを影から操ってそのバランスを取りながら、自身は中学時代とは打って変わった平穏な学園生活を送っていた。しかし、そこに彼の過去を知る電波女が現れる。久遠かぐや、それは彼がオタク時代に愛してやまなかった元歌手。しかし彼女は、彼からのオタク電波全開のレターの数々で壊れてしまい、歌うことが出来なくなってこの島へと流れてきた。自身が持つ携帯電話を、宇宙からやってきた友人だと言い張る彼女は、そこにすがって自分の心を守り続ける一方で、過去を振り切るためにその携帯電話を衛星軌道に乗せようとする。過去の秘密を握られている貴人は、彼女の指示に従ってロケットの制作に取り掛かり始める……という、まあそんな感じの奇想天外なストーリー。

……なんですけどね。
これがかなり面白い。いやはやちょっとびっくり。

正直なところ、ストーリー自体は王道まっしぐらな青春もので、高校生たちが荒廃する日常の中で、自分達の生きがいを何かに見つけ出していく、というもの。初めはなりゆきで始めることになったロケット制作が、次第に自分達にとって大切なものになり、そしてかけがえのない生きがいになっていく。見方によっては一種の現実逃避、けれどもそこには若い情熱があり、夢見る若者たちの熱気がある。中学・高校生時代に熱中するものは、傍からみると馬鹿げたもののように見える(この作品の場合にはロケット)わけだし、実際、少なからず馬鹿げたものもあるわけですが;、それでもそこに本気で取り組む姿、一心不乱に何かに打ち込む姿には、やはり心惹かれるものがあります。

そうした「熱気」がホンモノに感じられるのは、やはりギミックであるロケット、なのでしょう。ロケットというモチーフは「何かを突破していく」という、若さゆえの熱気をストレートに表現できるわけですが、このロケットに関する描写が極めて緻密でリアリティがある。私はロケットに関しては門外漢ですが、二段式ロケットや液体燃料などのギミックが満載で、そういう部分だけをかいつまんで読んでいても十二分に楽しめるようになっていますね。

加えてこの作品、中学生や高校生の悩みを極力、等身大に描こうとしているところも非常に好感度が高いところでしょう。恋愛に悩み、生き方に悩み、自己愛に溺れ、みんなを掌握しようと策に走り、心の逃避のために理由を付ける。ちょっと説明が過ぎる感があるのは減点事項ですし、高校生というよりは大学生ぐらいの子たちが悩みそうな内容も多い気がしますが、こうした作りこみの細かさも上手いといわざるを得ません。

全体的に理系色が強い印象があり、小説を読んでいるよりも説明文を読んでいるような印象があるのがもったいない気もしますが、それを差し引いても十分よく出来ている、という印象。読み始めは憂鬱ですが;、読後感がなかなか爽快な一冊なので、興味がある方はぜひ読んでみてください。


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コメント(2)

どもです。
楽しんで頂けたようで良かったです。インプレありがとうございます。
「痛さ」も含めて、こういうストレートな青春物は大好物なのです。
随所に見られるパロディや、ご都合主義的な部分は、減点式で評価するとマイナスに取られる場合もあるかもしれませんが、それも含めて、大好きですw
ではでは。

程々に量があると思うのですが、あっと言う間に読み終えてしまいました。感想は既に書かれている通りで省略しますが、良かったですよぉ。

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