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書評:デフレの正体 - 経済は「人口の波」で動く

というわけで今日はこちらの話をひとつ。

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『デフレの正体 - 経済は「人口の波」で動く』。最近あんまり新書を読んでないなぁ、ということで、書店でベストセラーになっていた一冊をチョイスして読んでみたのですが、これがびっくり、めちゃめちゃ面白い一冊でした。

要点を一言でいえば、日本経済は景気ではなく人口の波で動いている、ということ。これを 客観的な数値データを持ち出して、論理的に綺麗に紐解いていく一冊。特に見事なのが、現在、新聞やテレビなどで声高に叫ばれている景気対策や施策がどれほど的外れで荒唐無稽なものであるかを、明快な論理で次々と一刀両断にしていくところ。例えば、失業の悪化が叫ばれているけれども、失業者数と就業者数の増減を踏まえてこれを言っているのかどうか?など。ここ 10 年にあった景気向上はなぜ実感が沸かなかったのか、数字の取り方ひとつ、見方ひとつでこれほどまでに読み取り方が変わるものなのか、とびっくりさせてくれる一冊です。

自分的まとめとして要点だけを書きだしてみると、

  • 今の日本の景気は、海外輸出に大きく依存している。
  • 日本の工業製品などのブランド力は極めて高く、ほとんどの国に対して貿易黒字になっている。しかし、日本はフランス、スイス、イタリアに対して貿易赤字。これは、この 3 つの国が極めて高いブランド製品(特に女性向け)を持っているため。
  • 今後も日本が国際競争力を維持できるかは、フランスやスイス、イタリアなどと同様の、高いブランド価値を持つ製品を創出していくことができるかに依存する。工業製品の分野などではこれは難しい。
  • 今後、5~10 年間で団塊世代が引退を迎えるため、生産年齢人口(幼少児と高齢者を除いた人たちの人口)が一気に激減する。高齢者は健康のために資産をストックするため、生産年齢人口の減少は、そのまま内需(消費)の縮小に直結する。
  • 生産年齢人口の大きな減少(=内需の縮小)は、景気改善の効果をまるごと打ち消してしまう。内需が拡大しない限り、景気改善の実感は得られない。
  • 取るべき施策は 3 つ。① 生産年齢人口が減るペースを少しでも弱める。② 生産年齢人口に該当する世代の個人所得の総額を維持し増やす。③ (生産年齢人口+高齢者による)個人消費の総額を維持し増やす。

と、こんな感じ。数値データを割愛したので、これらの結論だけピックアップするとあまり説得力がないように見えますが、とはいえ日常的な実感と見事に合致するこのような結果が数値データから読み取られている点には驚きます。なるほど確かにそういうことなのか、という感じ。①~③についても、非常に論理的に明快な解答を提示している点は評価に値する、と思います。

ただその半面で読んでいて思ったのは、「それができれば苦労はしないんだよなー;」ということ。おそらく著者の方もよくわかっていらっしゃるとは思うのですが、人間の問題の解決を阻むのは人間だったりするのですよね;。これが実現できれば本当にいいんだけどなぁと思う半面、これらの施策を進めるためには、いろんな逆風を乗り越えていく必要があろうと思いました。

とはいえ、様々な示唆に満ちている一冊。今の世の中の現状を等身大に把握する、という意味でも非常に勉強になりました。予備知識がなくてもだいたい要点はつかめると思いますので、ぜひ興味が向いた人は読んでみてください。


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