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書評:宇宙は何でできているのか

というわけで今日はこちらの書評をひとつ~。

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ええっと、最近ベストセラーになっているらしい新書、「宇宙は何でできているのか」。副題として、「素粒子物理学で解く宇宙の謎」というタイトルがついているのですが、その名の通り、宇宙という壮大なテーマが、素粒子物理学という微細な粒子の物理学と関連している、という非常に興味深いテーマを扱っている一冊です。

私自身は一応これでも理系出身なので、この手の話は当然好きだしそこそこは知っているつもりだったのですが、びっくりしてしまったのはここ約 10 年ほどの研究の進展。著者の村山さんは素粒子物理学の第一線の研究者の方なのですが、ここ 10 年ほどで次々と明かされたり実証されつつある理論や研究内容を、本当にわかりやすく説明してくれています。確かに当時、私が学生の頃にそういえばそんな話があったよなぁ……と思う内容について驚くほど研究が進んでいたりして、思わず読みふけってしまうワナ。

しかも素晴らしいのは、この本、一切といっていいほど数式が出てこないのですよ。私は物理学と言えば数式で紐解かれる世界、というイメージを持っていたし、また私自身が塾でアルバイトをしていたときにはそういう教え方をしていたのですが、この本は数式を使わずに、その理論や数式が何を意味するのかを、極めて平易な日本語と例えで説明してくれている。そして驚くべきはその豊富な知識。次から次へと手を変え品を変えて説明される話の数々は、単に第一線の研究者としての力量だけではなく、語り手としての恐るべき力量を感じさせてくれると同時に、物理学の面白さをこれでもかというぐらいに見せつけてくれる。例えば標準理論というものがどういうものなのか、どんな意味があるのかということを、おおまかなところだけでも理解した気にさせてくれた本はこれが初めてで、いやー、もし私が学生時代にこれを聞いていたら研究の世界に残っていたのかも……と思ってしまうぐらいにエキサイティングな世界を見せてくれました。いやはや本当に素晴らしい。

それにしても、この本を読んでみて思ったのは、自分は物理学のことをこれっぽっちもわかってなかったんだなぁ、ということ。一応これでも塾のアルバイトで物理学を教えていた人間なのでそこそこはわかっているつもりだったのですが、この本を読んで思ったのは、やはり物理学も実験の世界なのだということ。や、高校や大学の最初の頃に学ぶ物理学は、基本的には理論と答えがかちっと固まっている世界で、物理=すでに完成された理論のもとに形作られる学問、というイメージを持っていたのですよね。ある意味、数学に近いものを感じていたのですが、宇宙物理学や素粒子物理学にはこれほどまでに分からないところがあり、そして新しい理論を構築していくことで世界を読み解こうとする夢のある学問なのだということを教えてくれます。逆に言うと、そういう物理学の魅力は塾の講義ではぜんぜん説明できてなかったなぁ……と思うところもあり(まあ受験用のテクニックとしての物理なのでそれはそれでアリ、とは思いますが;)、ちょっと申し訳なかったかな?と思うところもあります。

なにはともあれ、物理学の面白さをいろいろ教えてくれる一冊。特に学生の方にはおすすめなので、ぜひ興味がある方は読んでみてください。


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