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ラスベガス旅行記 Part 6. ショー & アトラクション Cirque du Soleil “O”

ついに、というかようやく、本当に書きたかったエントリにたどり着きましたよ~~;;。

20130117-181500

ベラッジオで演じられている、シルク・ドゥ・ソレイユのフラッグシップショー、”O”。1998 年から上演され続けている大人気のショーなのですが、実は私、このショーは一度見ていたりします;。2003 年のラスベガス初訪問の際に、演劇好きな妹と母親がこれをどうしても見たい! といって、ホテルに直接 FAX までしてショーのチケットを押さえたのですが、私自身は当時、こうしたショーを全く見たことがなく、正直、どう見ればいいのか全くわからなかったためにその有難味が全くわからなかったのですが;、その後いろんなショーを見て再びここに舞い戻ってきた次第。でもって感想としては。

神、というかこれを神と言わずしてなんという;;。
すいません、まさか 10 年も前にこんな神ショーに連れていってもらっていたなんて全く思ってもみませんでした><。

というかこのショー、過去見てきたどんなショーとも比べものにならなかったです。ただただ圧巻、そして感動ショーで心が揺さぶられるとはこういうことなのか、と思い知らされるほどの感動を味わったのは初めてでした。

“O” の語源は、フランス語で水を意味する “eau” という言葉。その名の通り、巨大なプールを使った水のショー。といっても普通のショーとは違い、上下稼働する台によって水深やプールの形を様々に変えることが可能なステージを使います。あっという間に広い平らなステージになったり、あるいは非常に深いプールになったり、さらには三角形の一部だけくり抜かれたプールになったりと自在に変化するのはそれだけでもなかなかにすごいのですが、しかし本当の意味ですごいのは、その舞台装置を 120% 使い切っているというところ。プールの形状の使い方はもちろん、水面の波紋の立たせ方、飛沫の使い方、そこに入り込む光の使い方、さらには推進をうまくコントロールすることによって浅い水面を作るなど、そのアイディアと美的センスたるや驚くべきものがあります。天井から下がってくる大きなミラーも、時として月になったり、あるいはターゲットスコープになったりと、その多彩な発想力に驚かされます。

そしてこの “O”、そのステージの大きさにも驚かされます。っつーかこれ、普通じゃない広さですよ;;。左右の幅と奥行きは、おそらく日本の一般的なステージの倍以上は軽くある。ステージ開始直後はまずいったん手前のステージだけが開き、その後、さらに後ろに控える巨大なプールを見せるという演出にまず驚かされる。しかもその巨大なステージを、常時 10 人から数十人程度のパフォーマーが縦横無尽に動き回り、多彩な技を見せていくのは圧巻の一言に尽きます。なにより素晴らしいのは、「絵としての見せ方」。どのカットを切り出してもそれ自体がひとつの絵になっていて、とてつもなく広いステージでありながらその広さを見事に活かした演技をしきっている。例えば、絵としての見栄えをよくするためだけに、人を沈ませて龍の後ろにくっつけたりとか、手前に人を走らせるだけではなくて奥にも走らせるとか。たかがそれだけのためにいったいどれだけの人を動員しているのだ、と言いたくなりますが、その一方で、そういう細部の積み上げこそが、この感動を生み出しているのですよね。ステージの横、縦、奥の幅を見事に活かしきっており、なるほどこれを見てしまうと他のショーが寂しく見えるというのも理解できます。無駄なものもなく、足りないものもなく、そして余計なものもない。見事なまでに調和されたステージがそこにはあるのですよ。

さらに素晴らしいのは音楽。民族音楽的な曲調のものが多いのですが、序盤は不思議な曲調で開始するも徐々に盛り上がっていき、中盤では舞台を全力で盛り上げる一方、フィナーレでは心にじんわりと染み入ってくるような落ち着いた曲で見事に締めくくり。作品は、あるひとりの男性が不思議な女性からリボンを受け取るところからスタートし、夢の世界へと誘われ、そしてそこから戻ってくる、というストーリーラインなのですが、そのストーリーラインを一連の曲で見事に表現。決して目新しさのある曲というわけではないのに、誘われた夢の世界の、幻想的な不思議な空気が音楽で非常によく表現されています。そしてそれに加えて、完璧なまでの演技との調和。タイミング合わせも完璧なら、舞台転換のつなぎも実に見事。全く中だるみなどすることなく、最後まで一気に走り切るショーはすごいとしか言いようがありません。

しかもこのステージで驚かされるのが、なによりシルクならではの高度な技が、あくまでショーを優先させて演じられるというポイント。最初に見た時には、いわゆる技としては地味なものが多いなぁと思ったのですが、冷静に考えるといずれの技も極めて高度なものばかり。例えば、空中で揺れる船の上で演じられるトラピス(空中ブランコ)、水に濡れた鉄パイプの上での演技など、いずれも危険なものばかり。しかし実際に見ていると、そうした技の高度差よりも、むしろステージとの一体感にのめり込まされることが多い。アスリートによるオリンピック競技を見ているのではなく、アーティストによるショーを見ている、という言葉がまさにしっくりくるような、そういう演目が多かったのが素晴らしいところ。また、劇中に差し挟まれるクラウンの演技も素晴らしかったです。夢の世界への案内人となったり、幕間に演じられる二人組のクラウンによる不思議なコメディ。ステージの断片的な要素をうまくつなぎ合わせる役割をきれいに担っていました。

そしてなにより終幕の一連の流れは最高の出来で、作品タイトルと同じ ”O” と名付けられたテーマ曲に合わせて一瞬でステージに幕が引かれる演出、そしてフィナーレで演者がステージに消えていく演出はまさに珠玉の出来栄え。スタンディングオベーションが、義務感や形式的なものではなかった作品は今までほとんど目にしたことがないのですが、この “O” はまさにスタンディングオベーションせずにはいられない。ステージを演じ切ったアーティストの人たちに感謝の気持ちを送らずにはいられない、そういう気持ちのこもった拍手が次々と観客から湧き上がってくる。開幕から 15 年経ってもこれだけの人を魅了し続けるショーは、そうそうないのではないでしょうか?

なにもかもが調和しており、非の打ちどころのない感動的な芸術作品、という表現がぴったりで、これぞまさしく Cirque du Soleil の真骨頂。オープンから 15 年たった今でも、オフシーズンの日でさえステージが満席になる、というのがよくわかるショーでした。それでも敢えて難点を言うとすれば、昔の自分がそうだったように、ある程度の数のショーを見ていて、それなりに基礎知識がないと、何が素晴らしいのかピンと来ない可能性がある、という点でしょうか? ショープログラムのディレクターインタビューでは、”O” は演劇(劇作品)へのオマージュである、と語られていましたが、確かにある程度の数のショーを見てそのフォーマットを理解していないと、何やら散漫なショーに見えてしまったり、作品のテーマやストーリーに悩んでしまうかもしれません。(← 私自身、最初に見たときにはどうやってこの作品を見ればよいのか自体がわからなくて評価のしようがなかったのですよねぇ;) けれども、ここ 10 年間でいろいろなショーを見てきた上でこのショーを見ると、このショーはあらゆるショーの頂点に立つ作品なのではないかと感じさせてくれる点が至るところに存在していました。今回のラスベガスツアーでは様々なショーを見ましたが、この作品だけは文字通り別格。見終わった後、思わず直後の公演のチケットの確保に走って 2 ループしてしまったほどで;、これを見て人生が変わった、という人がいるのも決して大げさな評価とは思えない、そんな素晴らしいショーでした。いや~、終わってみれば、今回のラスベガスツアーは全部これに持っていかれた感じでしたよ、ええ^^。微妙なショーも多かったですが、最終日の夜にこの “O” を設定しておいて本当によかったです。頑張って、ほぼセンターの、前から 5 列目あたりを押さえたかいがありましたよ^^。

YouTube などを見ると、こっそり撮影してアップしている人もいるようですが、とにかくまだ見たことがないという方は、ネタバレ的な動画は一切見ないで現地に行って見ることをおすすめしたいです。シルクの作品ではレジデントショー(常設ステージショー)は基本的に DVD 化などがされないようなのですが、”O” に関しては、それだけのために行って見るだけの価値がある作品なのも確かです。いろんなショーを見るという予習はちょっと必要かもしれませんが、興味のある方はぜひ見てみていただきたい作品でした。


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