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旭山動物園革命 - 夢を実現した復活プロジェクト

しばらく前に読んだのですが、エントリ化してなかったのでこちらのお話をひとつ。

20090524i

「旭山動物園革命 - 夢を実現した復活プロジェクト」。今年の 2 月にでじくま氏とともに旭山動物園にふらっと立ち寄ってきたのですが(こちら)、その舞台裏についていろいろと語っている一冊。旭山動物園園長の小菅さんが書かれた本で、旭山動物園に行ったときに感銘を受けてぜひこの人の本を読んでみたい……ということで購入した一冊。行ったときには分からなかったのですが、日本一と呼ばれる動物園はこうやって出来たのか、となるほどと唸らされてしまったり。

私は旭山動物園のエントリを書く時に、「生きている動物園」というタイトルを付けてみたのですが、この動物園のもともとの特徴は、『行動展示』と呼ばれる展示方法を使っているところ。動物の展示方法としては、檻に入れて展示する「形態展示」(姿かたちを見せる展示)、動物の生息環境を園内に最大限に再現して展示する「生態的展示」の二種類が基本なのだそうですが、旭山動物園の方法は根本的な考え方が違う。それは、動物の持つ最も特徴的な動きを見せる、という考え方。

我々人間であっても、「自分が誰にも負けないこと」を発揮できる場を与えられ、しかもそれが他人に評価されれば嬉しいに決まっているし、もっとやろう、もっとうまくなろう、と生き生きするはず。だったら、動物だって同じはずだ、と考えて、他の動物にはないそれぞれの動物だけが持つ能力を発揮できる環境を作ることで、動物たちが自分らしさを発揮できる環境を作ろう、と考えたのだとか。

ところがそのコンセプトはわかりやすくても、実際にそれを実現するとなるとそう簡単な話ではない。もともと動物園には、「レクリエーションの場」「教育の場」「自然保護の場」「調査・研究の場」という 4 つの役割がある。しかも入園料は市が政策として決定していて(だから入園料が異様に安くて、大人でも 800 円)、数億円規模の繰入金を市から予算付けしてもらっているのだとか。先立つものがあるわけでもなく、さらに立地的な不利、病気のトラブル、前例のない施設づくりなどもあり、様々な紆余曲折を経て今の形に至った様子が克明に描かれています。

細かい話は本を読んでいただけるとよいかと思うのですが、やはり感銘を受けるのは、小菅園長の意志の強さ。動物たちが生き生きできる環境を整え、それを通していのちを伝えることをなにより大切にしている。たとえ逆風があっても正しいことを貫き通すという姿が一貫しているのが凄いのですね。例えば、一般的な動物園ではタブー視されている喪中報告(死亡告知)や、歳を取って動作が緩慢になった動物や交通事故に遭った動物たちの展示。老いや死は、人間を含めすべての動物が等しく辿る道である、と考えているのですね。

私がつねづね言っているのは、「地球上に生きる生物の命はみな平等だ」ということだ。サルの命はたまたまサルという入れ物に入っているだけだし、ホッキョクグマの命もたまたまホッキョクグマという入れ物の中に入っているだけ。ペンギンの命もたまたまペンギンという入れ物に入っているだけだし、私たち人間の命も、人間という入れ物の中にたまたま入っているだけ。だから、命に優劣はない。命は、等しくかけがえのないものなのである。

動物園に珍獣は要らない、と小菅園長は言っているのですが、なるほどと納得できるというか、すっと腑に落ちる言葉。あれだけの素晴らしい動物園を作りだすのは、やはり背後にそれを支えるしっかりとした人生観や思想があってこそのものだなと改めて思わされました。前回は冬期の動物園にしか行っていないので、ぜひ次回は夏季の動物園にも行ってみたいものです。


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