先日ですが、たまたま息子が早く寝たので、amazon のレンタルビデオでシン・ゴジラを鑑賞。
この作品、劇場でぜひ見るべきと複数人から勧められていたのですが結局手を付けられず。自宅でプロジェクターで見たのでそれなりの迫力では見られましたが、これは確かにリアルタイムで見ていたらいろいろ話が盛り上がったかもなぁ、とは思いました。そこはちょっと残念;。作品についてはもういろいろ語り尽くされていると思うのですが、私なりに少しだけ。
この作品、「現実 vs 虚構」というキャッチコピーがついており、「日本人」をリアルに描くことに注力した群像劇。もともと日本は欧米のような強烈なリーダーシップが存在しない国であり、特に前半ではそれがこれでもかというぐらい悪い方向に働く。責任転嫁と責任逃れの嵐、判断力の甘さと決断力のなさが次々と事態の悪化を招いて傷口を広げていく有様は、まさに日本の悲惨な現場そのもの。これがワシントンであっても同じことをする、と言い放つアメリカ人の熱核弾頭攻撃とのギャップがとにかく際立っている。
しかし日本は合法と違法の間のギリギリのところで国を守るという文化を持つ国。確かに前半ではそれがこれでもかというぐらい悪い方向に振れたわけですが、後半では逆に物は言いようという詭弁まがいの方法で、次々と矢継ぎ早に手を打っていく。害虫駆除という名目で出動しているので自衛隊の戦闘行為も許容、というあたりも妙にリアル。最後の最後には寝技まで繰り出して、ギリギリのせめぎあいの中で未来を勝ち取る。ミサイル攻撃を派手に繰り広げる米軍とは真逆の、ゴジラの倒し方のあまりのダサさ。その無様な勝ち方そのものが日本人のリアルな姿であると言わんがばかりにぶつけてきた本作は、さすが庵野監督といわずにはいられません。
ただその一方で思ってしまったのは、いややっぱりこの後半戦の展開そのものが虚構だよなぁ、ということ。
この作品、欧米のような強烈なリーダーシップがなくても、小さな個人の努力の積み重なりで大きなことを成し遂げられる、というある意味わかりやすいストーリーラインなのですが(なので作品としても圧倒的な情報量で個人に目が行き過ぎないように工夫している)、問題なのはその転換点となっているのが、ゴジラ退治を害虫駆除と位置付けたところ。これにより超法規的措置による自衛隊の防衛出動や無制限火力使用が始まり、その後、官民そろって国家が一丸となっていくのですが、果たして今の日本において、人々をそれだけ強固に束ねるビジョンというのは存在しうるものなのかどうか。
日本人は追い詰められたときに本領を発揮する、という話にはなっているものの、実態は追い詰められても本領を発揮できない。だからこそこういう作品にカタルシスを感じるのではないか? とも思ってしまうんですよね;。(← まあちょっと悲観論的すぎる見方だろう、というのもその通りなのですが。) 願わくば、ここまで本気で追い詰められなくても本領が発揮できる、そういう国民であってほしいと思う今日この頃。3.11 にしろ北朝鮮情勢にしろ、不安定な世の中だからこそそう願わずにはいられません。
しかしそれにしても庵野監督、エヴァ放り出してなにやってるんですか、と散々たたかれた作品ですが、ふたを開けてみればとんでもない作品ですね。膨大な情報量で見ている人を圧倒しつつ、それでもテーマは見失わず、さらに様々なところに共感できる要素や小ネタを織り込みまくる作り込みの細かさ。CG のクォリティの高さも相まって、すごい作品になっているなぁととにかく感心。ヤシマ作品(違)には思いっきり笑いましたが(BGM 含めて)、まあなにはともあれ、そろそろ本家のエヴァに戻ってきちんと完結させてほしいものです、はい^^。
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