というわけで、ついうっかり(?)こちらを購入。
Nikon の APS-C ミラーレスカメラ、Z50 ダブルズームキット。各社からミラーレス機が続々と発売される中、もう Nikon は APS-C のミラーレスは永遠に出てこないんじゃないかと思っていたら、周回遅れになってから今さらのように発売されたのがこの Z50。昨年、新設計の Z マウントを搭載してフルサイズミラーレスが発売されていましたが、それに続く形で一年遅れでこの APS-C ミラーレスが出てきた次第です。12 月中の購入であればキャッシュバックとキャッシュレス還元、さらに FTZ の半額キャンペーンなどで 4~5 万単位で購入金額が変わってしまうこともあって、慌てて購入に踏み切りました。
とりあえず 3 台並べてみるとこんな感じ。左から α6000+SEL1670、Z50 + Z16-50、D7100 + Nikkor 16-80。
さて早速使ってみたわけですが、さすが最後発 APS-C とでもいうべきか;、非常に素晴らしい作りのミラーレスに仕上がっています。
■ コンデジではなく一眼寄りの操作性
ソニーのように電子ファインダーがボディ左上に位置しているようなミラーレスは、実態として液晶画面を見ながら撮影するケースが多く、使い方もコンデジに近い。その一方で Z50 は光軸と一致した場所に普通にファインダーがあり、各種のボタンや操作系も一眼レフのそれに準じています。お手軽さではコンデジタイプのミラーレスに分がありますが、きちんと操作しながら撮影できるようになると、一眼レフ寄りの操作系を持つミラーレスの方がやはり扱いやすいです。やや無理やりな配置とはいえ、ファインダーを覗きながら一通りの設定変更ができるようになっているあたりは、カメラメーターとしての執念みたいなものも感じます;。
■ 手に馴染むサイズと持ちやすさ
明確に他社のミラーレスと違うと感じたのはこのポイント。多くのミラーレスは本体サイズを少しでも薄く小さくするために、本体頭上のファインダーをなくしたりグリップを小さくしていますが、Z50 はミラーレスとしては敢えて大きめのグリップを備えています。一見するとごつく感じますが、小ささ・薄さを追求しているミラーレスもまっとうなレンズをつければ相応のサイズになるため、結局グリップが小さいことはあまりメリットにならなかったりするのが実際のところ。上の写真を見てみるとわかるように、α6000 でもまともなレンズとして SEL1670 をつけると、結局グリップの小ささは何ら意味をなさなくなってしまう。
半面、Z50 はキットレンズの DX16-50 とちょうどバランスよく設計され(というよりキットレンズがそのように設計されたのでしょう)、非常に握りやすくなっています。無理に小型化していないために重心バランスもよく、持っていて非常に手に馴染みます。
また同様に、小型すぎるミラーレス機で困るのが、結婚式などの重要な屋内撮影で強力な大型フラッシュが必要になるケース。本体がレンズやフラッシュに対してアンバランスなほど小さすぎるために、大型フラッシュをつけると極めて持ちづらい(というより持てない)。対して Z50 は SB-800 という最大級の大型フラッシュをつけても難なくホールドできます。こういうケースに遭遇すると、必要以上に小さくすることにこだわりすぎず(=スペック上のサイズの小ささを追求するよりも)、実際の撮影シチュエーションを想定したときの持ちやすさや取り回しのよさにこだわることの方が重要なのだと気づかされます。
# ちなみに今回、Z50 を購入する決め手の一つになったのは、α6000 に HVL-F60RM, F45RM あたりをつけたときのバランスの悪さでした。SONY の APS-C ミラーレスに巨大なフラッシュをつけるととてもじゃないけどホールドできない;。店員さんに聞いたときも、APS-C ミラーレスは ISO 感度を上げて対応した方がよい、というアドバイスでしたが、まあそうだよね……という印象;。
■ 優秀な 2 本のキットレンズ
Z50 のキットレンズ 16-50, 50-250 の 2 本はそれぞれ以下のような特徴を持った超優秀なレンズです。Z シリーズの APS-C レンズはまだ皆無ですが、とりあえずミラーレスを始めよう、という方であればこの二本だけでまずは十二分です。
- DX16-50/3.5-6.3
映りはハイエンドレンズにはさすがに及ばないものの、パンケーキサイズの小型レンズでありながら高い描画力と強力な手振れ補正機能を持ちます。Z50 と組み合わせて街中でスナップ撮影する目的で使う分には、小ささに全く見合わない高性能ぶりを見せてくれるレンズです。 - DX50-250/4.5-6.3
驚くべきはこちらのレンズで、250mm テレ端ですらキレっキレの恐ろしい解像力を見せてくれます。強力な手振れ補正のおかげで手持ち 1/15 ぐらいでも撮影可能、本体と組み合わせても 850g ぐらいしかないってどういうことよ……;、と言いたくなるぐらいのトンデモレンズです。
レンズ関連で問題になるのは、Z マウントの APS-C 向け小型レンズのラインアップが極めて貧弱な点。現在発売されているのはキットレンズの 2 本のみで、今後予定されているのも 18-140mm の便利ズームのみ。APS-C をチョイスしているのにフルサイズの重たい・高い・でかいレンズなど使いたくないわけで;、ここはもうちょっとなんとかしてほしいところです。現時点では Z マウントの仕様を公開していないためにサードパーティレンズも全く発売されておらず、唯一の選択肢はFTZ マウンターで豊富かつ安価な従来の F マウントレンズを利用することのみ。このあたりは今後に期待したいところです。
# もっとも、正直なところキットレンズ 2 本の出来が恐ろしくよいので、割り切って利用すればこれで十分という印象はありますけど;。
■ 驚くべき高感度耐性
レンズ性能もさることながら、実際に使ってみて驚かされたのはカメラの高感度耐性。D7500, D500 相当とのふれこみでしたが、実際のユーザからは Z6, 7 にも負けない高感度耐性があるというレポートもあり、いずれにしても相当高い高感度耐性であることは間違いありません。ISO1000 あたりまでなら質感もほとんど遜色なし、そこから先は利用用途次第で 3200~6400 あたりまでは状況次第で使える、という印象もあります。kakaku.com のスレッドでかなり作例が挙がっているので参考になるのではと思います。
■ 取って出し jpg の素直さ
かつて Nikon と言えば Canon や SONY と違って RAW 現像が大原則、みたいに言われていたように思いますが、Z50 の場合、取って出しの JPG ファイルでも十分に色彩バランスが取れているように感じます。このあたりはお手軽カメラとして非常に重要ですね。
■ スマホアプリの作りの良さ
そしてさらに驚かされたのが、スマホアプリ SnapBridge の作りの良さ。正直、SONY の方がこの手のスマホアプリは得意だろうと思っていたのですが、いやいや SnapBridge もとんでもなく便利に作られています。リモートシャッターは当然として、Bluetooth で常時接続、撮影時には自動的に GPS 位置情報取り込み、撮影した写真は自動でスマホに転送。こんなによく出来ているとは正直びっくりです。
難点としては、リモートシャッターとして利用する際の切り替え時間が結構かかること。なので専用の Bluetooth リモコン(ML-L7)も購入したのですが、まさかのスマホ排他利用……orz。まあこのあたりは割り切って利用するしかなさそうです。
■ 総評として
昨年 11 月に発売されて以来、価格.com ではデジカメ一眼・ミラーレス一眼どちらでも 1 位をキープし続けていますが、(キャッシュバックのおかげもあるもののそれを抜きにしても)現時点では結構ぶっちぎりな価格帯性能比を持ったミラーレスのように感じます。ネットを見ていると、APS-C ミラーレスのフラッグシップともいえるα6000 シリーズとの比較になることが多いようですが、コンデジライクな α6000 シリーズと一眼寄りの Z50 ということで、ちょっと宗教論争的なぶつかり合いの様相も。それだけこの Z50 のインパクトが強かった、ということなのでしょうね。
もともと Nikon 資産は一昨年に亡くなった父親から譲り受けたものが多いのですが、小型軽量なカメラにするために早々に αシリーズに浮気した自分;とは違って、父親は頑なにニコンとオリンパスで不便な撮影をしていました。Z50 は父が存命だったら、きっと速攻でこのカメラを購入してウハウハ言いながら鳥とか撮りまくっていたのだろうなぁ……と思わずにはいられないカメラです。触った瞬間から「これ!」と言いたくなるフィーリングの良さといい、いつでも気軽に持ち出せるコンパクトさといい、長く大切に使いたくなる機種ですね。ミラーレスに関してはかなりの周回遅れながら、本当にいい機種を出してくれた Nikon さんに脱帽 & 感謝です。このカメラが低迷する Nikon のミラーレスに対する起死回生の一手になってくれるとよいのですが。
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