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異世界おじさん

さて、最近見ているアニメでもう一作品取り上げたいのがこちら。

よくある異世界転生ものですが、いやこれは上手い設定を考えたなぁと非常に関心。17 歳のときにお年玉でセガサターンのゲームソフトを買いに行く途中でトラックに跳ねられ、17 年間の昏睡状態に。本人の意識は異世界から飛ばされ、そこから 17 年の時を経て帰ってきた「おじさん」が、甥っ子のたかふみとその幼馴染である藤宮と繰り広げるコメディアニメ。しょっぱなの OP からセガサターンネタ満載で、当時を知る人間かつセガサターンユーザだった自分としても笑えるネタが満載なのですが、いやー、これは先々かなり大化けしそうな気配。コメディアニメの行間から読み取れる作品のテーマ、それはすでに取り返しのつかなくなった過去を受け入れ、そして自分を認められるかどうか、という物語。

作品の主人公である「おじさん」は年齢にして 34 歳、しかし見た目は明らかにそれよりも老けており、一見すると 50~60 代といってもおかしくない。そんな「おじさん」は、異世界グランバハマルでツンデレエルフさんや氷の一族のメイベル、神聖魔導士のアリシアなどにフラグを立てまくるものの、超絶な勘違いでこれらを完膚なきまでにスルー。にもかかわらず、リアルの世界に戻ればたかふみに対する藤宮の好意をあっさりと見抜く側面も。たかふみはそんなおじさんに対して、異世界に戻れるなら戻りたいかと問うも、おじさんはあっさりとそれを否定。となると問題になるのは、おじさんは異世界で何をし、何を納得した上でこの現実世界に戻ってきたのか、という点。

過去を振り返るとき、自分が行ってきた数々の選択に自信を持って納得できると言い切れるかといえば、そこまで強気になれない人が多いはず。ツンデレエルフさんとのエピソードのように、後から気付くフラグだって当然あり、なぜあのときにそのフラグに気づかなかったのか、と後悔することもある。このおじさんはまさにそうしたフラグの数々を折りまくっているわけですが、にもかかわらずなぜおじさんはそれをやり直したい、グランバハマルに戻りたいと思うことはないのか。おじさんは涼しげな顔で、グランバハマルで過ごした過去を思い出に昇華している。オープニングテーマ曲の “story” にはまさにそれを示唆する歌詞がいくつも含まれています。なんとなく訳すとこんなニュアンスでしょうか。

  • I believe in what I’ve done, no reason to go back again (自分は自分が成し遂げてきたことを信じる、過去に戻る理由はない)
  • Talk to your spirit, don’t erase your memories and trust yourself, your life. New game has begun (自分に語り掛けろ、過去の思い出を消すな、自分とこれまでの人生を信じろ、次の新しいゲームはもう始まっている)
  • Trust yourself, don’t deny, Save yourself, don’t forget. (自分を信じろ、過去を否定するな、自分の魂を救え、過去を忘れるな)

要するに、過去を振り返るのでもなく、過去を忘れるのでもなく、今を形作る自分として受け入れて、前だけを見て戦い続けろ、と言っているわけですが、それは年老いて、未来と未来の選択肢が少なくなればなるほど難しくなる。それはまさしく「おじさん」が直面する中年クライシスそのもの。けれどもこのおじさんはすでに過去を思い出に昇華し、自分を受容するという『悟り』の領域に達しているわけですが、果たしてそれがなぜなのか。

そしてそれと同時並行で進むのが、異世界に飛ばされた当時の「おじさん」とほぼ同じ年代である、たかふみと藤宮の二人の関係。すでに変えることのできない「過去」であるおじさんとツンデレエルフやメイベルとの関係性と、これから作り上げていくことのできるたかふみと藤宮の関係性、という二つの物語を同時並走させるというのが作品の妙になっていて、ある意味では人生を達観している先輩としてのおじさんが、二人の関係を生暖かく見守る構図になっているのが面白いところ。

……まあ、ホントにただのコメディアニメで終わってしまう可能性もゼロではありませんが;、OP テーマがここまできっちり作品の設定に沿っているといろいろ勘繰りたくもなるもので。まだまだ先は長そうですが、まったりゆったり楽しみたいものです。


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