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発刊されていることに気付いておらず、先日ようやく読破しました。

[榎宮 祐]のノーゲーム・ノーライフ 11 ゲーマー兄妹たちはカップルにならなきゃ出られないそうです【電子特典付き】 (MF文庫J)

ノーゲーム・ノーライフ 11 巻。前巻から実に 3 年 9 か月ぶりの新刊で、ついにというかようやく出たのか、という感じ。作者の榎宮 祐氏は 10 年以上前に胃ガンを発症して海外で先進治療を受けているのですが、その後も頻繁に身体を壊している様子で、巻末あとがきによればここ数年は本当に死にそうになっていたのだとか。そんな経緯で上梓された 11 巻は、期待を大きく上回った、とんでもない一冊に仕上がっていました。

そういやノゲノラはエントリ書いたことないよな、と思い出して、軽く感想をまとめてみると。

そもそもノゲノラはおそらく相当に人を選ぶ作品。見た目は典型的な異世界転生モノで、引きこもりゲーマーが、ゲームで全てが決まるという転生先の異世界で無双する……という設定なのですが、実際にそこで描かれるのは「人間の持つ無限の可能性」。弱者によるジャイアントキリングこそがこの作品の神髄でしょう。それは第1巻の戴冠式のときにはっきりと宣言され、そして脈々と作品の根底に流れ続けています。

「三度繰り返す! 我らは弱者だ!
いつの世も強者であることにあぐらをかいた者どもの、喉元を食いちぎってきた――誇り高き『弱者』だ!」
「我々はここに、205代エルキア国王、女王として戴冠したことを宣言する」
「我ら二人は弱者として生き、弱者らしく戦い、そして弱者らしく強者を屠ることを、ここに宣言する! かつてそうだったように――これからもそうであるように!」
「認めよ! 我ら、最弱の種族!」
「何も持って生まれぬ故に――何モノにもなれる――最弱の種族であることを!」

作中で描かれるゲームは実在のものではなく、作者が作った架空のゲーム。それゆえにルールがやたらと複雑で理解するのが大変だったり、隠しルールが後から出てきてチート感満載な側面もあり、ネット上の評価を見ていてもそのあたりの不評は存在する様子。とはいえもともとノゲノラは外連味で魅せるタイプの作品なので、その部分に食ってかかるのはやや筋違いというもの。作品中では、上位種族が人類種(イマニティ)に負ける理由が、下位種族であることを侮ったから、という点で一貫しており、そこを突いて最後の最後に盤面をまるごとひっくり返す、というのがこの作品の醍醐味でもあるでしょう。

そして本巻。ゲームは妖精種と空白たちとの勝負……のように見せかけながら、実は空と白の恋愛ゲームにもなっていて、さらにはそれが森精種からの仕掛けによるもの、という多重構造になっていることに驚かされます。しかもそれが今どきらしい YouTube 配信やらバチェラーやらをネタにしているのにもびっくり。作者の榎宮さん、どんだけ多彩なんですか状態;。

# 実は 11 巻を読んだあと、1 巻から 11 巻まで改めて読破し直したのですが、全く筆力に衰えを感じないのは本当にすごいですね。これだけ長期の作品だと普通はダレてくるものですが、作品の密度を保ち続けているのには驚かされます。

11 巻のラストでは、いよいよ終局に向けて盤面を整えてきた感じがありますね。エルキア連邦と対エルキア連邦戦線に二分された世界、そして最後に待つラスボスは、森精種の全権代理者 アウリ=エル・ヴィオルハート……ではなく、おそらくエルキア共和国議員内閣・主席のクラミー・ツェル。……といってもこの構図は相当前から張られていた伏線だとは思いますが。

「私も――空も。超人でもなければ天才でもない。でも、そうある必要はないのよ。」
「そうであろうとすることが重要なの。」
「私達の無限回の失敗が、続く人の足下を照らす――暗闇を歩く灯火になる。」

「彼はプレイヤーであろうとした人よ。ただの人形であることを辞めた人。」
――そして、そう、強いて言うなら――と続ける。
「いずれ私達が、超える人――かしら?」

クラミーは空の記憶を共有していること、そして弱者によるジャイアントキリング、成長による無限の可能性こそが本作のテーマであることを踏まえれば、エルヴン・ガルド派遣監査官 フィール・ニルヴァレンを介してアウリ=エル・ヴィオルハートを出し抜く形でクラミーが連邦戦線の主導権を握る形になり、テトへの挑戦権を賭けて人類種の全権代理を争う……という構図、なんでしょうね。

しかしやはり心配なのは、作者である榎宮 祐氏の健康状態。無理をしないでほしいと思う一方で、早く続きも見たいしこの作品の結末を見てみたい、という気持ちも抑えられないのも本音なところ。そう思える作品に出会えたことだけでも幸せかもしれませんね。8 年前に放映されたアニメ版も秀逸だっただけに、2 期とかやってほしいところですが、さすがに今更で無理ですかねぇ。。。;

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