というわけでようやくサイドストーリーである、こもれびとかげろうをプレイ。Tips 36 まで埋めてフルコンプ。いや~、ギャルゲをフルコンプするなんて何年振りだろう、という感じなのですが、まずはひと言。
素晴らしかった。
いやー、問答無用でこれは大作の名にふさわしいゲームじゃないかと思ったり。
このゲーム、推理モノというほど難しい内容にはなっておらず、丁寧に読み解けば十二分に設定解釈ができる作品になっていて、しかも各キャラクターがそれぞれの信念なり想いなりに従って動いている、というのが本当に素晴らしい。それらが互いにかみ合うことによって、全体としてひとつのゲームを構成している。いやはや、これは見事。同人版(本編部分)も素晴らしい出来なのですが、加えてサイドストーリーである「こもれび」と「かげろう」の2編もまたすごい。これらは本編が始まる前の物語を描いているのですが、かげろうの最後のあたりは本編の一番の胆となる部分と絡んできていて、舌を巻きました。これはホントに同人クォリティなのかと小一時間^^。
いくつか Web サイトを回って見ているのですが、ざっと見たところ、あまり高い評価を受けていなさそうなところも非常に残念、な感じですね。これほどよくできたゲームは商用ゲームであっても決して多くないと思うのですが、表面上、ギャルゲという体裁をとっているのが悪いのか、ちょっと不当な評価な気もします。口コミ効果でもっと広まってもらえれば、という気もするのですが、実際にはなかなか難しいのかもしれませんね;。
というわけで、だいたい作品設定も解釈できたので、せっかくなのでざくっと書いておきます。細かいところまでは検証していないので、誰か確認してください(ぉ)。
以下、思いっきりネタバレなので、未プレイの方は読まないでください。
(微妙に改行....)
この作品についてはマニアがいるようで、作品の年表や用語集などをまとめてくださっている様子。ここのサイトは非常に参考になるので、ぜひご一読を。ただ、このサイトの情報だけだと分かりにくいのは、家系図がはっきりしないからでしょう。というわけで、家系図を作ってみました。こうしてまとめてみると、人間関係や夫婦関係などがよくわかります。

さて、この作品を読み解く鍵となるのは、やはりルナウィルス。ルナウィルスがどんなものなのか?がわかってくると、最後の秋桜の謎のセリフも割と簡単に読み解けます。要点を以下にまとめます。
- ルナウィルスとは、簡単に言えば、ヒトに寄生し、その記憶や自我を上書きし、その身体を乗っ取ることで生存していく、寄生虫のようなウィルス。ウィルスに感染すると、ウィルスはその記憶をコピーして保存するが、この際に、神経細胞の一部を傷つけるため、一時的な記憶喪失になることがある。
- この過去の記憶の発現(ルナウィルスの覚醒)は女性にしか現れず、男性の場合にはキャリア(感染)となることはあっても、身体を乗っ取られることはない。記憶の発現が生じるためには、キャリアの自我が何らかの形で失われる必要がある。自我が失われるパターンはいくつかあり、① 記憶操作(アリエスたちが行おうとしたこと)、② 遺伝的欠損(星乃明香里、西園寺明香、日向ひまわり、日向葵)、③ 心的外傷(雨宮紅葉)などがある。
- 月で発見されたオリジナルのルナウィルスが保有していたのは、おそらく何らかの外宇宙生命体の記憶。ちなみにかげろうに出てくる「神の入れ物」は、おそらくルナウィルスと何らかの関係があるものだが、アリス財団が作っていたコピー(銀の球体)は、記憶をコピーする機能(ウィルス)が欠損したもので、「記憶の器」にしかならない。クローン技術に見られる記憶喪失の問題を解消するために利用されたと考えられる。
- 感染経路は、母子感染と性的接触の 2 パターン。主な感染経路は以下の通り。
オリジナルのルナウィルス → 星乃明香里(直接感染)
星乃明香里 → 日向葵(母子感染)
星乃明香里 → アクア(ルナウィルスの直接投与)
日向葵 → 日向陽一(性的接触、2048/08/16~20 のどこか)
日向陽一 → 西園寺明香(性的接触、2050/04/01)
西園寺明香 → 日向ひまわり(母子感染)
??? → 雨宮大吾(感染元不明、おそらく性的接触)
雨宮大吾 → 雨宮紅葉(性的接触、2031年頃)
雨宮紅葉 → 雨宮銀河(母子感染)
雨宮紅葉 → 雨宮秋桜(母子感染)
雨宮紅葉 → 島崎道之(性的接触、2048/08/14~21 のどこか) - 自我の欠損に併せて、ルナウィルスが覚醒する。実際に覚醒した人とその理由は以下の通り。
日向葵(2048/08/22):先天的な遺伝子欠損
雨宮紅葉(2048/08/11):大吾の浮気による心的外傷(ぉ
雨宮秋桜(2050~55年のどこか):おそらく陽一への失恋による心的外傷
※ 明香里、明香の二人は、ルナウィルス覚醒よりも前に死んでしまったと思われる。 - ルナウィルスの特徴は、記憶をつないでいくことができるために、人間と違い、個体に意味を見出さないこと。群体として、種として命をつないでいくことを最大の使命としている。
最後のポイントは少しわかりにくいと思うので補足します。この作品中では、「生命は、生きるために生きている」という言葉が繰り返し出てきており、「種として命をつないでいくこと」を是としています。このことをルナウィルスに当てはめて考えると、ルナウィルスもまた「絶滅を免れる」ために全力であがいていると考えられるわけですが、全滅を免れるために、自らをも切り捨てることがある、というのが大きな特徴になっています。
例えばルナウィルスに覚醒した紅葉は、個に拘る人間を不完全な存在だと思っており、世界から戦争が絶えないのは感情に流される人の業によるものだと吐き捨てます。記憶を取りこぼし、心を欠け落としてもなお、大吾にしがみついている紅葉は自分の器としてあまりにも小さいと感じているわけですが、その紅葉は、葵こそが自分達の完成型に一番近いと語ります。ではその葵は何をしたのか?
葵は、かげろうのエピローグで覚醒した姿を見せ、宗一郎のたくらみ(高高度旅客機の事故を意図的に起こすこと)を知りながら、自らもその旅客機に乗ります。それはなぜか? それはこの時点において、ルナウィルス根絶を目指す宗一郎こそが、ルナウィルスにとって最大の敵だったから。葵は、自らがルナウィルスに感染・覚醒していることを最後まで隠し通し、その一方で、ルナウィルスのキャリアである、陽一と紅葉(及びその家族)を高高度旅客機から逃がす(← ※ ここは作中に書かれていないのですが、そう考えるといろいろつじつまが合います)。
記憶をつなげるということは、個人の個体に固執する必要がないということ。だからルナウィルスは、自分自身という存在にはこだわらず、「タネを残しておく」こと、すなわち種の存続にこだわるわけです。
と、ここまで読み解けてくると、ルナウィルスにとっての最大の脅威が何かもわかってくる。それは、西園寺が目指す外宇宙航行計画。これが実現してしまうと、乗っ取る対象となる人類が地球上からいなくなってしまうのですよね。
「――でも、大きくなったらきっとわかるよ。――これが、私たちと人類のゲームなんだって事。
うん。私たちが人類を滅ぼすのが先か、人類がこの星から逃げ出すのが先か――
7年前に一度はゲームオーバーになりかけたけど、またわからなくなってきたかな……
いい、ひまわりちゃん?
仲間は、私とひまわりちゃんの二人だけ――
そして敵は、全人類―――
ひまわりちゃんのパパは、いつかきっと人類を宇宙に連れ出すよ。
だから――後は時間との勝負。
でもね……私たちは絶対に負けないよ。
――負けたら、いけないんだ。」
「ひまわりちゃんも、大きくなったら思い出せるよ。
……何十億年も、月に閉じ込められていた時の記憶を。
……暗くて寒い世界で、ひとりぼっちだった記憶を。
その時また、会いに来るね。
その時までは―――パパと幸せにね。」
「――バレないようにしないとね、私が人類の敵だって事。
でも気付くわけないか……陽兄ちゃん鈍感だし。」
「でも――気づいてくれなかった。
――5年前、私が記憶を取り戻す前に気付いてくれてれば…」
「もう、ゲームは始まっちゃったんだ。
後は―――どっちが勝つかだけ。
―――負けないよ、陽兄ちゃんには。」
ここまで説明すれば、これらのセリフもだいたい読み解けてきます。簡単に書けば、まず 7 年前に、宗一郎のたくらみによってすべてのルナウィルスが根絶されそうになった。自分の気持ちにまったく気づいてもらえず、明香とくっついてしまった陽一のせいで秋桜は失恋。それがきっかけで心的外傷を負い(これはおそらく紅葉と同じ理由で、紅葉は大吾の浮気が原因で心的外傷に、秋桜は陽一と明香の関係に気付いて心的外傷に、というのが一番ありえそう)、ルナウィルスが覚醒。覚醒した仲間(あるいはこれから覚醒する仲間)は、今のところは秋桜とひまわりのみ。人類という種が残るのか、ルナウィルスという種が残るのか、という種の生き残りゲームは始まったばかり、という次第でしょう。
# でも 実はこの時点ではまだ紅葉は死んでないんじゃないかと思うんですが……うーん?^^
# もしかしたら、陽一への失恋ではなくて、紅葉(お母さん)が死んだことによるショックが原因、なのかもですね。
というわけで、仔細は一部わからないところもありますが、こういうふうに作品全体を俯瞰してみると、一貫したテーマが存在すると思うのですよね。それは「命を繋いでいく」ということ。ルナウィルスの命のつなぎ方と、人類の命のつなぎ方は大きく違っているけれども、どちらも命を繋いでいこうとしていることには変わりがない。そして人間に関して言うならば、彼らは様々な形で命を繋いでいこうとする。場合によってはそれはクローン技術や記憶の移植という悪魔のささやきであったりもするけれども、その親から子への思いの強さというものは、作品全体に一貫しているところがあります。特に、作品中での最大のダークホースである日向宗一郎も、結局のところは自らの命を繋いでいくことにこだわっていて、子に恵まれなかったときは悪事に手を染めまくっていたものの、子供が生まれると、その考え方を大きく変えていく。そういう、親子にかかわる様々な思いが作品の中にちりばめられている、と思うのですよね。
影のテーマとも言えるこうした内容は、表面的なギャルゲ部分を取り払った裏側のところに存在していて、ちゃんと作品を読み解かないと見えてこない部分ではある。しかも、その思いは千差万別で、決して単純化できるものではない。そういう意味で、単純かつ明快な作品というわけにはなっていないと思うのですが、けれども素晴らしい作品であることには変わりがない、と思います。というか、こういう良作が受け入れられていないというのが本当に残念だったりするのですが;。
それにしても、久々にきちんとプレイしたくなった一作で、こういう作品に巡り合えたのはうれしい限り。ギャルゲをプレイすることも減りましたが、こういう名作に出会えるとまたプレイしたい、というふうに思えますね。いやはや、素晴らしい作品でした。
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